これまでたくさん買ってくれたあのお客様が最近お店に来ていない…。店舗責任者ならそんなことに気づくことがあるのではないか。
そもそも優良顧客の定義はなんだろうか?
ポイントカードによる管理では「累積購買金額」に目がいきがちになる。しかし、これまでたくさん買ってくれたお客様が、これからもたくさん買ってくれるとは限らない。最後にお店に来て買ってくれた「最新購買日」という視点を組み合わせて分析する「顧客9分類分析」をやってみよう。
RFM分析を顧客9分類で簡素化する
過去3年間の購買データを使い、顧客ごとに累積購買金額と最終購買日を抽出し、集計したものが顧客9分類の表である。
データ作成の方法
顧客9分類分析は、「累積購買金額」と「最新購買日」の2軸で分析する。
累積購買金額の多い順からA・B・Cと3つのランクにわける。さらに、最新購買日の近い順から1・2・3とわける。こうやって9つの分類ができるので、全顧客をこの9分類にあてはめてみる。
上記の表では、累積購買金額を3年合計で、10万円以上、1~10万円、1万円以内という分け方をしている。また、最終購買日を3ヶ月以内、1年以内、1年超前という分け方をしている。
分析するさいの視点
最近、来なくなった優良顧客は「A1」から「A2」に、さらに「A3」へと変移していく。つまり、優良顧客が離れてしまわないうちに手を打つためには、「A2」や「A3」のお客様に、もう一度お店に来てもらえるように働きかけるという対策が重要である。
また、新規客は「C1」であることが多い。この「C1」が「B1」へと、そして「A1」へとランクアップしていくようになれば顧客の固定客化が進んでいることがわかる。
このように、顧客9分類分析から気づくことは多い。
ある日配品小売店の顧客9分類事例
この小売店は繰り返し購買が発生しやすい日配品を中心に販売している専門店である。
過去3年間に購買があった客数合計は約6400人である。
顧客数分布のグラフを見ると、R3(直近1年間の購買がない)という客数が約4700人となっており、これは全客数約6400人に対しては約58%となり、過半数を超えている。つまり、客数の半分以上がこの1年で購買がない状態(流出状態)になっていることがわかる。
また、直近3ヶ月以内に購買があった客数は約1000人であり客数全体の12%程度にとどまっている。さらに「A1」だけなら60人程度しかいない。
同じデータを「累積購買金額」で表したのが上記のグラフである。累積購買金額はグラフのなかの面積の大小でわかるようにした。
このグラフをみると、「A1」の累積購買金額が大きいことがわかる。「A1」は約60人しかいないのに約2000万円の購買が起きており、一人あたりの購入金額がとても大きいということである。「A1」は顧客全体の約1%にしかすぎないのにこのインパクトは大きい。
全体のなかでも「A1」は非常に重要な顧客であることが推察できる。ならば、この「A1」は特別扱いすべきではないだろうか。
また、いかにして「A1」を増やすかということが、当店にとっての重要な顧客育成の戦略であることがわかる。
一方で、累積購買金額の面積の大きさは「B」ランクが大きいことがわかる。とくに「B3」が大きい。この顧客9分類では「B3」を作らないように「B2」の段階でなんらかの対策を打つべきであることが容易に推察できるだろう。「B3」の人数は約700人なので、1ヶ月あたり60人発生していることになる。
例えば、3ヶ月以上購買がなくなってしまったBランクの顧客を毎月抽出すると約60人いることが想定されるので、そのお客さまになんらかのアプローチをすることで、顧客流出を抑止できる可能性が高いということである。
顧客9分類ごとの対応策の案
顧客9分類分析をすると、すべてのお客様に一律の対応ではよくないことがわかるだろう。
では、それぞれのお客様にどのように対応すればよいだろうか。
以下は、ある大手電気店の顧客9分類ごとの対応表である。
実際にこのとおりにしなければいけないわけではないが参考になるはずである。
特に重要と思われるのは以下のとおり
固定客重視の対策
A1を重視する→A1客のみのイベントや企画(値引きでなく価値ある体験がよい)
流出を防ぐ対策
B2、B3→おしらせメールやDMを送るなど
A2、A3→上記以外にも電話などで積極的にコンタクトする
新規客を固定化する対策
C1対応→まずは関係性を築くために21日間感動プログラムなどを実施する(初回購入から21日の間に3回以上のコンタクトがあると数年後の固定客化する率が2倍以上だという統計データがある)
このあたりのやり方は業態やビジネスモデルによっても違うので各社がオリジナルの対応ルールを決めておくのがよい。
顧客9分類はRFM分析のFを外したRM分析である
顧客9分類分析は、RFM分析の応用である。RFM分析は優れた分析方法であるが、視点が多すぎて初めて取り組むにはわかりにくい。そのためFを除外しRとMの2軸で分析する顧客9分類分析から試してみることが有効である。なれたら本格的にRFM分析に取り組むとよい。
RFM分析とは、「Recency(最新購買日)」「Frequency(購買頻度)」「Monetary(累計購買金額)」の3つの視点から、顧客をランク付けする優良顧客を抽出する方法である。3つの視点の高低から高いロイヤルティー(忠誠度)を持っている顧客や離反客を識別する。
https://www.google.com/search?q=RFM分析
RFM分析に関してはググるとたくさんの情報があるので調べてみることをおすすめする。
この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
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