農商工連携の認定も増えつつあり、農商工連携ビジネスの注目度も高まっている。農商工連携は、農(農業者)と商工(流通や加工など)の2つの業態の組織が互いに連携して、新商品開発や新たなサービス開発などを行い、新商品や新サービスを展開する一連の取り組みのことである。農商工連携により、農側と商工側が相互の経営資源を活用して、事業者にとって新商品や新サービスを生み出すことが期待されている。そんななか、1人農商工連携ともいえる取り組みで業績を伸ばしている「風来」に注目したい。
ひとりでできる農商工連携ビジネスモデルの「風来」
西田栄喜さんが運営
「風来」は、幸せな有機農業者の西田栄喜さんが運営する農業のビジネススタイル。自宅を兼ねた直販ショップの裏に畑があり、野菜作りから漬物加工そして販売までのほとんどを1人で行う。もちろん奥様の協力もあるのですべて1人というわけではないが、かわいいお子様もいて家事も多いため主要な業務はほとんどが西田栄喜さんが中心になって行う。
この日も近所のお客様が野菜の種を買いに来店。どの大根を作ればいいかなどという相談をしながら購入していった。
風来の畑は3反歩(約900坪)
風来の畑は、自宅を兼ねた直販ショップの裏にあり、その規模は3反歩(約900坪)である。900坪というと住宅用地ならばとても広大な面積だが、農業用地としての3反歩はとても小さい面積だ。
もしも3反歩の農地で作られる野菜を市場出荷するだけの農業を行うとしたらその収益は100万円になるだろうか…?(注:この数値は一般論で、風来のことではありません)
さて、専業農家として経済的に自立するだけの収入を得るために必要な農地面積はどのくらいだろう?ある農業法人から聞いた例では、稲作なら10ha(約3万坪)以上、野菜なら1ha(約3000坪)以上。しかも、この規模は最低でも必要な面積で、他にハウスやトラクタなどの農業設備の投資もかなり必要であり、その分をまかなうためにはさらなる収入増加を図る農地拡大が求められ、結果的に必要な農地面積は上記の2~3倍だという。
新規就農を志す人たち
新規就農を志す人たちが増えているが、参入障壁は多い。そのひとつが農地の確保である。専業農家として自立し経営が成り立つような農地面積が最低でも1ha(約3000坪)とか3ha(約9000坪)といわれたら、その確保はかなり困難だ。
全国で耕作放棄地が増えているから、それをまとめて借りればいいという考えもある。しかし、実際には「土地所有という権利問題」なので利害関係者が多く、調整が非常に困難で、実現はそう簡単ではないだろう。
日本一小さな農家
農業を取り巻く環境は厳しいが、そんな中でも自立した農業ビジネスを実現したのが「風来」である。専業農家として家族4人がちゃんと食べていける収入を確立し、持続可能な発展をしている点がすばらしい。
西田栄喜さん自ら「自分は日本一小さな農家」と言うことがあるが、なるほどと思わせる説得力がある。
実は、「風来」が経済的に成り立つ秘密は「6次産業ビジネス」であることだといえるだろう。「6次産業ビジネス」とは1次+2次+3次=6次…という意味である。
風来にとっては、一次産業が農業で、二次産業が漬物製造業で、三次産業が店での直販やインターネット通販などの販売・サービス分野である。風来は、この3つの産業のバランスがいい。
6次産業化のビジネス
風来は一次産業も二次産業も三次産業もバランスよく内包し、六次産業として一気通貫で実現したビジネスモデルだから、その統合した付加価値が高いのである。
そもそも日本の3つの産業構造は、GDP比で、一次産業が一割弱、二次産業が2割強、三次産業が7割となっており、大きく付加価値を生み出しているのは三次産業である。
たとえば、農作物価格が60円のにんじんをにんじんジュースという加工品にすれば240円となり、そのしぼりたてにんじんジュースをレストランなどでサービス提供すれば700円となるという試算ができる。農作物60円と加工品240円とサービス700円を合計すると1000円だ。これをすべてひとつの組織で提供すれば、その利益は最大化する可能性がある。
体験型サービスはどうだろう
具体例として、農地でにんじんなどをお客様に収穫してもらい、そのにんじんを目の前でジュースに加工でき、その場で楽しみながら飲んでもらうという一連の体験型サービスが実現したとしたら、1人@1000円でもニーズはあるのではないだろうか?
しかもこの6次産業モデルは、安心安全が担保できるしくみになることから、ソーシャルな評価も向上するだろう。
風来は、「①はくさいなど有機無農薬野菜」→「②キムチなどの漬物加工」→「③インターネット通販などによる直販」というのが背骨となったビジネスモデル。この背骨がしっかりしているから、農作物およびその派生商品の通販や、他の農業仲間の加工品販売というプラス要素も生まれてくる。
風来型ビジネスモデル
風来型ビジネスモデルなら、少ない投資で新規就農が成功する可能性が高くなると遠田は考えている。もしも新規就農を真剣に考えているのならば、風来を見学に来てはいかがだろうか?反響が多いようならば、西田栄喜さんを講師として招いてセミナを開いてもいいとひそかに考えているところである。
風来
http://www.fuurai.jp/
〒929-0113 石川県能美市大成町1-75
店主 西田栄喜さん
▼テレビ放映された西田さん「ミニマム主義」
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これから農業経営を志す方は西田さんの「ミニマム主義で行こう」をご覧になってみてはいかがですか?
ミニマム主義で行こう
ミニマム主義とは
以下抜粋
風来の農業経営の根本にはミニマム主義があります。これが私の根底であり、この考え方なら独立農家へのハードルがすごく低くなるのではないかと考えています。
ミニマム。直訳すると「最小」「最小限の」である。つまりミニマ ム主義とは小さい農家でいきましょうということです。あわよくば面積拡充なんて考えているのと最初からコンパクトで行こうでは、投資額も違えば効率も変わってきます。面積、規模などある程度制限することによって土地活用、時間の効率もアップします。
また大きな機械を買う必要がないので借金する必要がなくなります。そして地域の人間関係も小さいということでスムーズでです。目指すところはコンパクトといったところでしょうか。
今この日本で会社か何か起こそうとすると莫大な資金とノウハウが必要になります。しかし最小単位で出来るもの。それが農業です。
現代の農業というと大型化、拡大化、機械化がどんどん進んでいます。どれもこれも資金のいる物ばかり。そうしなければ食べていけな いような錯覚を与えてくれます。また国もホイホイと金を貸してくれ る始末。(もちろん返さなければいけませんが)
果たして大型化する必要があるのでしょうか?まずはそこから 考える必要があるのではないでしょうか。
※出展は風来より
この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
民民での直接契約を中心としていますが、商工三団体などの支援機関が主催するセミナー講師を年間数十回担当したり、支援機関の専門家派遣や中小企業基盤整備機構の経営窓口相談に対応したりもしています。
保有資格:中小企業診断士、情報処理技術者など
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