太打ちと細打ちの二種類の蕎麦を用意して、お客様に自由に選ばせてくれる蕎麦屋がある。タケノコ産地で有名な金沢の別所地区にある蕎麦宮川だ。
この蕎麦屋は十割そばでいつ行っても満席の繁盛店だ。人気の理由は、「蕎麦がよいこと」、そして「接客がよいこと」だろう。
遠田はベジタリアンなので鰹ダシが苦手。だからメニューに書いてない蕎麦をリクエストすることが多い。そんなとき、笑顔で対応してくれるかどうかはとても重要だ。そのときの印象で次に来店する機会があるかどうかが決まることもある。
繁盛している蕎麦屋
太打ちと細打ちの二種類の蕎麦
手前が細打ち、右奥が太打ちの「おろしそば」である。
ダシ抜き、鰹節なし、かわりに「塩」でというリクエスト。
この要望を笑顔で受けてくれる蕎麦屋はそれほど多くない。半数以上は困った顔をしたり明らかにいやな表情に変わる。が、蕎麦宮川はちゃんと聞いてくれるし、それ以上の対応をしてくれるのだ。
大根おろしは普通のものと辛味大根が選べるので辛味大根にした。さらに、本来メニューに書いてあるおろしそばは「太打ち」のみなのだが、接客のおねえさんが「細打ちに替えることもできますよ」と言ってくれるのがうれしい。
では、とばかりに
「細打ちも太打ちも両方ください」ということになった。
このあと、「先にどちらを出しますか?」と聞いてくれるのがまたにくい。どちらから食べるかは蕎麦好きにとってとても重要だからだ。
蕎麦好きは蕎麦を食べる順番に流儀がある
蕎麦好きはだいたい2杯食べるが、その人それぞれに食べる順番の流儀を持っている。「ざるそば(せいろ)→おろしそば」というパターン、「おろしそば(冷)→かけそば(温)」というパターンの2つがとくに多い気がする。
一品注文して食べ終わる頃にもう一品注文するということもあるが、店内が混んでいたりするとそれもままならない。順番をわきまえていないような蕎麦屋だと二品注文しても出す順番は客の都合でなく店の都合で決まる。
あらかじめ二品の注文を聞いてくれて、どのタイミングで二品目を出すかを心得ている蕎麦屋は蕎麦好きにとって、ありがたい存在なのである。
遠田は両方揃った写真を撮りたかったので、「一緒に出してください」と返事をした。
午前11時半に入店、すでに店内は満席。玄関先ではそろそろ順番待ちが出始めるという混雑時になっている。ほどなくして、先に細打ちの蕎麦がきた。その細打ち蕎麦の香りを楽しみ写真を撮っている間に、太打ちの蕎麦がきた。このタイミングはほぼ同時といっていいだろう。
細打ちの蕎麦
細打ちの蕎麦は優雅で繊細なニュアンスを持っている。
生粉打ち十割蕎麦を細打ちにするには蕎麦打ちの技術が求められる。蕎麦はつなぎ(小麦粉)を入れずに打とうとするとなかなかつながらず、きれいな麺の状態にするのがむずかしい。そのため細打ちの十割そばを食べるときは、すぐにも切れそうなくらい柔らかいふんわりとした蕎麦だと思いながら少量づつ箸にとり口に運ぶようにしている。
宮川の細打ち蕎麦はやはり繊細な蕎麦だった。口当たりが柔らかく、歯ではなく唇でも噛み切れるくらいの絶妙のコシ。それでいてちゃんと細麺として存在している蕎麦。実は固めで太麺のほうが好みなのだが、この細麺は「あり」だ。たとえば、年老いて歯が悪い蕎麦好きの両親に食べさせるならこんな蕎麦だと親孝行になるだろうな、と思いを馳せる。
太打ちの蕎麦
太打ちの蕎麦は粗粗しさとしゃきっとカドが立っているのがいい。蕎麦粉も細打ちと太打ちで配合を変えているのだろう。太打ちの蕎麦は挽きぐるみの蕎麦の実も入れてあるのか少し粗挽きっぽいようだ。色も黒々としており、なにより蕎麦の香りが強く立っており、蕎麦好きにはたまらない。以前この蕎麦屋で食べたときの太打ちの蕎麦と印象はほぼ同じ。安定した品質の蕎麦を提供していることがわかる。
蕎麦湯が楽しみで蕎麦屋に来る客もいる
蕎麦の後は蕎麦湯が楽しみ。蕎麦湯を飲みたいので蕎麦屋に行くという蕎麦好きもいるくらいだ。
蕎麦を半分以上食べたころに蕎麦湯が出てくる。宮川の蕎麦湯はどろっとして濃厚な味わいなので大好きだが蕎麦湯の入れ物は一人用の小さな器なので、蕎麦湯好きにするとすぐに無くなってしまう。
そんな表情を読み取ってくれるのか「蕎麦湯はおかわりできますよ」といってくれるのがまたうれしい。一杯目の蕎麦湯はそのまま蕎麦湯だけで味わう。すでに卓に届いて数分たっている蕎麦湯は少しぬるくなっているので、蕎麦湯だけで飲むのにちょうどよい温度になっている。
蕎麦湯のおかわりを注文するとき、細打ちの蕎麦を一口か二口分くらいとネギと少量の大根おろしを残しておいた。二杯目の蕎麦湯が届いたら、届いたばかりの熱い蕎麦湯を細打ちの蕎麦の器に一気に注ぎこむ。これが上記の蕎麦湯の写真である。
蕎麦湯は温かいかけそば代わりにもなる。細打ちの蕎麦が少し入った熱々の蕎麦湯を楽しんだ。ダシを入れたり塩を入れたりしてもよいのだが、今回はなにも入れなかった。
このように蕎麦湯の楽しみ方は幾通りもある。
繁盛する蕎麦屋は接客がいいからリピート客が多い
繁盛している蕎麦屋は接客がいい。だから気分よく勘定をして「また来よう」と思うのだろう。
レジの横に「蕎麦粉500グラム900円」という張り紙があった。自宅で「蕎麦湯か焼き蕎麦がき」でも作ろうと思いたった。勘定のとき「蕎麦粉をください」というとレジに立ったおねえさんから「蕎麦打ちの蕎麦粉でいいですか?」と尋ねられた。「蕎麦を打つのではなく、蕎麦がきにします。」と返事をすると、「はいわかりました、少々お待ちください。」というと、厨房に下がった。
奥の方から「○○粉のほうを500グラム」と言っているのが聞こえた。おそらく何種類かの蕎麦粉があり、用途によって使い分けているのだろう。ほどなくして、蕎麦がきに適しているだろうという「蕎麦粉500グラム」を手にした。
遠田は自分で蕎麦打ちはしない。しかし、今度は「蕎麦打ち用の蕎麦粉500グラムください」と言ったらどんな蕎麦粉を出してくれるのかを見てみたくなった。次回また行こうと思い、蕎麦屋を後にした。
当店の接客のよさは特定の誰かだけがよいのではなく、誰もがよかった。これは組織として接客を重視している現れである。おそらく経営者がお客様をおもてなししたいという意志を強く持っているからだろう。
蕎麦は嗜好品的だ。蕎麦は主食になる食品ではあるが生活必需品ではない。気分よく店を後にするお客様がどれだけいるかで繁盛するかどうかが決まる。
繁盛する蕎麦屋の強みは「蕎麦」だけでなく、蕎麦好き客対応の「接客」にある。
宮川は金沢の山手にある蕎麦屋で、車では山環の野田山あたりで折れ、つつじヶ丘を通って筍の産地である別所にある。
手打ち蕎麦 宮川
TEL 076-243-2887
石川県金沢市別所町ツ55
手打ち蕎麦 宮川の関連記事
宮川の蕎麦は細打ちと太打ちでそば粉を変えていました
金沢別所の宮川は太打ち蕎麦がうまい
蕎麦の太さと細さについて
【2022年4月12日追記】
蕎麦の麺体を切る際の太さ細さで味わいが変わるという記事は
同じ蕎麦の麺体なのに、切り幅が違うだけでぜんぜん違う食感の蕎麦になることを体験しました
です。
あわせて読んでいただくと参考になると思います。
この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
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