ワードプレス(WordPress)ムーバブルタイプ(MovableType)

WordPressがMovableTypeを逆転してから4年、それでもMovableTypeを選択した3つの理由はこれだ

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WordPressとMovableType今や世界を代表するブログCMSといえば「WordPress(ワードプレス)」である。ブログCMSの草分け的存在だった「MovableType(ムーバブルタイプ)」を逆転したのはおそらく2009年ころ。左の図はグーグルトレンドで「ワードプレス」と「ムーバブルタイプ」の検索ボリューム(検索される頻度)を比較したグラフである。あえて日本語(カタカナ)で調べているのは日本国内での状況を示したかったからである。このグラフでは2009年ころに逆転が起きている。別の指標(出荷本数、利用WEBサイト数、アクセス数など)でも調べるべきであるが、概ね傾向としてはこんなものであろう。

WordPressがMovableTypeを逆転してから4年

WordPressとMovableType

WordPressがMovableTypeを逆転した理由は多数あるが、もっとも大きかったのは「無料」だということだろう。先行するMovableTypeは有料版で市場を圧巻していた。WordPressは最初から無料で提供を始め急激に利用者が増加した。

その後、MovableTypeはMTOS(ムーバブルタイプオープンソース)という機能限定の無料版を出荷し始めたが、WordPress利用者増加の流れは止まらなかった。

ワードプレスの長所と短所

WordPressのメリット

1.WordPressは無料である。
WordPressを使うメリットは、なんといっても無料だからという点が大きい。レンタルサーバを自分で用意する必要はあるが、WordPress自体は無料なので普及が一気に進んだ。多数の利用者がいれば開発や提供する側も力が入り、よりよいサービスがどんどん増えていくという好循環が起こった。
一方よく比較されるMovableTypeは基本的に有料である。MovableType6になって料金体系がわかりやすくお買い得になったが、それでも約10万円(通常版は94500円)の出費になる。無料と約10万円という差は大きい。

2.WordPressは簡単である。
WordPressのインストールやバージョンアップは驚くほど簡単である。レンタルサーバ各社にもWordPressをクイックインストールするサービスが用意されていることが多い。ロリポップやさくらインターネットなど低額のレンタルサーバ会社を使えば、WordPressを使うための追加料金は不要。とても簡単に独自ドメインのブログをスタートすることができる。
運用の際も、スマートフォンのアプリでWordPressが用意されているため、記事の投稿は出先でスマフォでOK。これは簡単である。実際に「蕎麦食べ歩き北陸」というブログは最初からWordPressで運営しており、最近の入力は蕎麦屋で写真を撮ってすぐにそのままスマフォで投稿するという流れになっている。この運用方法は便利なので、「蕎麦食べ歩き北陸」はWordPressのまま使い続けるつもりである。

3.WordPressは便利である。
WordPressには多数のプラグインやデザインテーマが用意されており、利用目的にあわせて必要なものを選択するだけでカスタマイズができるのがいい。そしてそのほとんどが無料で提供されているのもすごい。WEBデザインなどの製作者側にしてもPHPで作られているWordPressはカスタマイズやチューニングが簡単便利。MovableTypeでは再構築という作業をしないとデザインやカスタマイズがうまく表示されたかどうかわからなかったが、WordPressは動的生成なのですぐに反映される点も重宝がられている。
さらに動的生成のメリットを活かしレスポンシブデザイン(可変幅)も取り入れやすい。現在新たに提供されているWordPressのデザインテーマは、ほとんどがレスポンシブデザインで、可変幅のスマフォ対応のものが多いのも魅力である。

WordPressのデメリット

WordPressを使う上でのデメリットも多数ある。

1.WordPressには正式なサポートがない。
フリーソフトなので、製造出荷している団体に正式なサポートは期待できない。幸い多数のコミュニティや製作者がいるので困ったときでも解決できる方法はたくさんあるが、基本的に自己解決を図るしかない。また、製品としての継続性や動作保証についてもフリーソフトという状況からしても永続的な存続は不透明である。

2.WordPressは動的生成ゆえにページ表示速度が遅い
WordPressは動的生成(ダイナミック)であり、MYSQLなどのデータベースとPHPでその都度ページを生成している。そのためどうしても表示速度が遅くなる。静的生成(スタティック)であればすでに「****.html」というページが生成されているため表示速度は早い。同様のページを動的生成と静的生成で比較すれば、明らかに表示速度は静的生成のほうが早くなる。
グーグルが検索順位決定要因のひとつに「ページ表示速度」を取り入れているので、SEO的な観点からもページ表示速度が遅いのは大きな弱点になる。この弱点を補うためには、高速サーバの利用やキャッシュ生成のプラグインの利用などの対策もあるが、高速サーバを選択すれば維持費が高くなるし、キャッシュ生成プラグインを利用すれば製作途中の不具合などが起きやすくなり、簡単にはいかない問題である。

3.WordPressでトラブルが起きたときは深刻である
WordPressの最大の課題は深刻なトラブルが起きた時の対処だろう。最近、不正ログインによる「ブログのっとり問題」が多発している。利用者が増えたことにより悪意を持って脆弱性を狙われるという問題も多い。動的生成ゆえにデータベースの不具合でページ表示ができなくなるなども問題もある。MYSQLが使えるレンタルサーバではWordPressの利用が増えているため、慢性的な負荷増大が置きており問題解決を困難にしている面もある。また、静的生成のhtmlページがないため、自分のパソコンなどのローカル環境にWEBサイトのバックアップを取ることは困難である。
WordPressでなにか問題が起きたときには、しばらくWEBサイトが閲覧できないという事態を覚悟して運営をする必要があるだろう。

このブログを「MovableType(MT6)」にした理由

MovableTypeを使うには理由がある。当ブログ「tohdamikio.com」はココログからレンタルサーバに引っ越してCMSをMovableType最新バージョン6にした。実はWordPress利用も真剣に検討していた。テスト運用の時期には、まったく同じ記事をWordPressでも生成し、テストを繰り返していた。9月にそのテストを行なった結果、WordPressではなくMovableTypeを選択した。

1.MovableTypeのページの表示速度が圧倒的にWordPressよりも早かったこと
WordPressを試用していた約1ヶ月は、同じページでも表示速度が非常に遅く、表示されるのを待つのにイライラすることが頻発した。当ブログでも人気の記事は月間約1万のアクセスがあり、動的生成のWordPressではそのアクセスに耐えられそうになかった。WordPressでページ表示速度を向上させるキャシュ生成のプラグインも何種類が試した。とくに「WP Super Cache」は使い勝手もよく表示速度向上の成果もでた。しかし、閲覧者が許容してくれそうな範囲までの高速化には至らなかった。

2.MovableTypeはデータベースがMYSQLではなくSQliteで構築できたこと
WordPress利用者の増加でMYSQLが使える安いレンタルサーバは負荷が高まっている。MovableTypeでも通常はMYSQLを使うので、「再構築」するときはサーバに付加がかかるしそれなりに時間もかかる。とくに再構築という作業はWordPressには必要ないので、再構築時間は短いほどよい。MovableTypeではデータベースをMYSQLにするよりSQliteにしたほうが再構築速度が圧倒的に早い。MovableType4のとき、再構築速度は体感的にSQliteがMYSQLよりも数倍早かった。
MovableType5以降はSQliteが正式サポートされていないが、実はMovableType6ではSQliteの相性がよく利用者もかなり多いという。実際に9月はMovableType6のベータ版でSQliteで運用してきたが、SQliteを使うことによる問題はとくになく軽快な動きだった。
すでにこのブログでは記事数が3000を超えているが、現在の再構築時間は日々の記事を書いたときは数秒程度、全記事を再構築したときでも30分程度である。

3.運用の安心感はMovableTypeが高かったこと
1ヶ月の間、WordPressとMovableTypeを使い比べて、安心感はMovableTypeのほうが高かった。このブログは遠田幹雄の公式ブログであり、それなりに体裁を整えたいということや、運用上の管理を適正に行なうことなどにも配慮した。記事数が多いせいでそれなりにアクセス数もあり、月間のページビューは10万PVを超えた月もある。そのようなビッグアクセスに耐えられるようにするためにはWordPressでは心もとなかった。
実際に過去の導入実績で、官公庁や大企業ではMovableTypeの利用が多く、運用上の観点からも様々な対策が実装されたり今後もサポートされることが期待できる。有料でもそのほうがいいと判断した。
MovableType6はAPIも充実しており、レスポンシブデザインに対応したテーマも活用できるので、当面はこのまま運用していくつもりである。

ブログは目的や用途によって「MovableType」と「WordPress」を使い分けるのがよい

単純にMovableTypeとWordPressのどちらがよいかとを比較しても仕方がない。目的や使い方や条件によって選択肢が変わるだろう。

とにかく簡単にスタートしたいとか、単なる趣味のブログであればとりあえずWordPressでいいのではないだろうか。実際に、遠田もWordPressで運しているブログは複数ある。
企業用など安定的なWEBサイト運営を期待したいなら有料版でもMovableTypeがいいかもしれない。そして1つのWEBサイトの中でもどちらも組み合わせて利用することも可能である。

また、記事を書き出し(エキスポート)し別のブログにインポートすることもできるので、数年経過した段階で見直すことも可能である。

要は「使い分け」である。自分がやりたいことを見つめて条件を整えれば答がでるはずである。