金沢商工会議所にてキャッシュレス決済セミナーを開催した。今回のセミナーは、遠田が冒頭で90分キャッシュレス経済について解説したあとに、北國銀行とリクルートライフスタイルがさらに詳しく説明するという3本立て。さらにセミナー会場の広報部では、クレジット決済端末やPOSレジの体験コーナーもあり充実した内容だった。13時から16時半までという長時間だったがかなりの賑わいがあり、最後のエアレジブース前には女性受講者たちが黒山の人だかりになっていたのが印象的。給与支払いにスマホ決済が使えるかという質問もあった。
▼金沢商工会議所が広報していたフライヤー
▼セミナーの様子
▼後方の体験ブース
▼充実した関連資料
セミナーは大盛況だったが、遠田には少し後悔が残った。遠田のセミナー後の受講者からの質問に十分に答えられなかった案件があったからだ。
給与をスマホ決済で払えるか?
会場からの質問は「給与支払いをスマホでできるのか?」という内容だった。
質問の意図が、「スマホ端末での銀行振り込み手続き」という意味だと判断して回答した。
しかし、説明後に十分な満足感がなかったような表情だったのが気になっていた。
あとでよく考えると、「給与支払いを銀行振込ではなく、PayPayやLINEPayなどによる送金で処理できないのか?」という意図だったのではないか、とおおいに反省している。
たしかに、給与支払いを銀行振込から、PayPayやLINEPayなどによる送金で処理できれば、企業としては手数料がかからないのでコストダウンメリットがある。
そこで、この件に関しての現段階の状況について説明する。
給与支払いは現金が基本である。
実は、給与支払いは現金のみとするということを労働基準法が定めている。事実上広く使われている銀行振込は「例外」扱いなのである。
現段階で、給与支払いは「現金」または「銀行振込」の二択というのが現実である。だから、現状ではPayPayやLINEPayなど給与支払いをしてはいけない。
(ボーナスに関してはこの定めからははずれるので、労使間の事前合意があればPayPayやLINEPayなどで支払うことが可能である。また、社員に対する給与ではなく、外注製作者などへの報酬も、事前合意があればペイ払いは可能である。)
しかし、キャッシュレス決済を推進する政府としては、給与支払いをペイ払いなど多様化を検討している。「ペイ払い」を銀行振込と同様に「例外」扱いしようということである。政府が6月にまとめた成長戦略のフォローアップでは「2019年度のできるだけ早期に制度化を図る」としている。
問題になっているが、キャッシュレス事業者が経営破綻したら労働者に給与が支払われなくなってしまうという懸念である。給与は生活のために必要な資金なのでスムーズに労働者の手元に届かなければならない。
保険制度や代位弁済のしくみなど「キャッシュレス事業者が破綻した場合に十分な額が早期に労働者に支払われる制度設計」が急がれている。
キャッシュレス事業を管轄する金融庁と労働基準法を所管する厚労省とで調整が必要だが、なかなか進んでいないと言われている。
アメリカではすでに銀行口座を介さない給与支払いの方法として「ペイロールカード」が普及し始めている。移民や低所得者層を中心に利用が増え、2017年の時点で4割近い企業が導入しているという。
日本の給与支払いにペイ払いができるかどうかはこれからの行政力にかかっていると思われる。日本が国際的に遅れているキャッシュレス決済を推進させるためにも早く実現してほしいものである。
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この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
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