新会社法の施行にともない、中小企業経営者として対応が迫られることがある。その1つとしてあげられるのが、資本構成の見直しだ。
中小企業(非公開会社の同族会社)の経営者が自己所有の株式の一部を他の経営者と交換するということについて考えたい。
図は、資本金300万円の有限会社と資本金1000万円の株式会社の経営者の例だ。(会社法施行後、有限会社は特例有限会社となり、基本的に株式会社と同じ扱いになる。)
A社のX氏所有の株式60万円分とB社のY氏所有の株式60万円を交換することとした。
株式を交換するには譲渡等承認請求手続きが必要
会社と個人、両方の手続きが必要
会社法は株式譲渡を個人と会社にわけて記述している面があるため、対応してわけて対策を打つ。
個人としては
①互いに60万円づつを相手先個人口座に振り込む
だけでOK。覚書などを残してもよいが記録が残るからこれだけでも十分だろう。
会社のほうは、
②譲渡等承認請求を行い、取締役会または株主総会にて株主変更の承認を得ること
が必要となる。(②を省略しても株主の権利は移転したとみなす判例もあるようだが、会社法施行後微妙な点もある、公正を期すためにも手続きをしておいたほうがよい。)
①と②が完了すれば手続きは終了する。
同族企業への課税強化という背景
【背景】
国は同族企業への課税強化の姿勢を明確にしている。
資本金の最低金額を撤廃したため、零細な個人事業主も大会社も等しく株式会社を名乗ることができるようになった。実態として個人事業主であればそれに見合った税制で対応しようということである。国の対策は、経営者の所得を損金として参入しないということである。
この対策として、資本構成の見直しがある。株式会社の株主構成が90%以上血縁関係で占められていると税制上は個人事業主と同等にみなされ課税強化されてしまう。
そこで、この機会に会社らしく、血縁以外の資本家に資本参加を求めようということである。税制上は、血縁以外の資本家に10%を超える株式を所有してもらうことが必要になる。
株券の有無について
また、株券の有無について。
会社法は、これまでと立場を180度変え、「株券不発行」を原則としている。これまでも譲渡制限がある非公開会社では株券をする必要はなかった。これを一歩進めたカタチになっている。ただし、株主から株券の発行を請求された場合には、株券を発行してもよいことになっている。
この点、法の精神からすると「株券発行は禁止」とすべきである、という議論もある。譲渡制限がある非公開会社では、株券の効力はなく、株券の存在自体が実態との矛盾をひき起こす可能性を助長するからだ。
譲渡制限がある非公開会社では、株券不発行の原則を守りたいものだ。
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遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
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