LINEPayとPayPayはこれまで店舗側の決済手数料を0円としていましたが、その期限を2021年9月30日までにするという発表がありました。つまり、2021年10月1日から手数料が有料になるということです。Pay払いを導入し採用している店舗としては「手数料が無料だからという理由で使い始めたのに」と反発もあるかもしれませんね。
ですが、その手数料がいくらになるのかについてはまだ決まっていないようです。このコロナ禍で社会が激変している中、ソフトバンクは状況を見極めようとしているのかもしれません。
PayPayとLINEPayはどちらもソフトバンクグループです
2021年3月にヤフーとLINEが経営統合しました。ですから、ヤフーが運営するPayPayとLINEが運営するLINEPayはどちらもソフトバンクグループとなり、サービスも連携していくことになりました。
大きな枠組みとして、Pay払いのサービスは金融サービスとして拡充していき「PayPay」ブランドに統一するということのようです。
PayPayブランドで金融サービスを展開する予定
ソフトバンクが2021年3月期の第一四半期の決算発表資料を公開しています。
以下の画像は
https://cdn.softbank.jp/corp/set/data/ir/documents/presentations/fy2020/results/pdf/sbkk_earnings_presentation_20200804.pdf
からの引用です。
PayPayプラットフォーム戦略というのを発表しています。
既存の金融サービスを「PayPay」ブランドに統一することです。すでに複数の社名変更が進んでおり、例えばジャパンネット銀行はPayPay銀行に社名が変わっています。
PayPayを入り口にしてさまざまな金融サービスを展開するという戦略です。
実際に、QR決済サービスではシェアNO1がPayPayになっています。PayPayが55%でLINEPayが5%なので、合計すると60%のシェアを握っており、現在は一人勝ち状態です。
Pay払いの手数料有料化でキャッシュレス決済の流れはどうなる?
QR決済ブームによりキャッシュレス決済の動きはこの2年ほどで一気に進みました。2021年10月からの手数料有料化でこの流れにブレーキがかかるかもしれません。
しかし、手数料有料化ということと2021年10月1日からという日時は決まっているのですが、手数料がいくらになるのかについては未定です。
昨年までの段階では手数料について、2021年8月から有料化するという予定でした。
・LINEPayは2021年8月から2.5%にする
・PayPayは2021年10月から有料化するが手数料は未定
本日、LINEPayから加盟店舗にメールが届き「LINEPayの有料化を10月からにする」という連絡がありました。手数料についてはそのパーセンテージを明記してありませんでした。
LINE Payでは、2021年7月31日(土)までとしていた「プリントQR」「店舗用アプリ」「支払いリンク」の決済手数料の無料期間を2か月延長し、2021年9月30日(木)までといたします。
■決済手数料の無料期間:
(変更前)2018年8月1日 (水) ~ 2021月7月31日(土)まで
(変更後)2018年8月1日 (水) ~ 2021月9月30日(木)まで
現段階では、PayPayもLINEPayも手数料に関しては同じようなスタンスになったということです。
おそらく、コロナ禍で社会が激変している状況で手数料有料化を予定どおり実施しては影響が大きいと予測し、実施時期を少し後ろにずらしたのではないかと思われます。
とくに、Pay払いは飲食店や小売店の利用が多いため、緊急事態宣言で売上が大きく落ち込んでいますので、手数料の有料化は泣きっ面に蜂のような状況になりますからね。
Pay払いの手数料はいくらになるのか?
Pay払いの手数料は1.0~2.0%の間のどこかになると推測しています。ちょっと幅が大きくて恐縮ですが、1%台ということですね。もっと思い切って予測すると「1.5%」くらいではないかと思います。
その理由は以下のとおりです。
中国のQR決済手数料は1%弱
中国で爆発的にQR決済が普及したのは、アリペイやウィチャットペイの手数料が0.5~1.0%程度と安かったためだと言われています。
日本ではPayPayが手数料0%を謳って導入を促進してきた経緯がありますが、もともとのビジネスモデルが中国のQR決済でした。なので、ひとつの目安は中国のQR決済の手数料になります。これまで先行投資してきた分を回収したいという思惑もあるでしょうから、そうなると0%台というのは考えにくいので、1.0%程度というのが下限かなと思われます。
LINEPayは2.5%の手数料を公表したのが痛手だった
一方で、もともとLINEPayは1年以上前から有料化のさいの手数料を2.5%と公表していました。PayPayがQRコード決済に参入する3年前までは業界トップはLINEPayでした。それがが一気に逆転されてしまった原因のひとつがこの手数料2.5%ということだったのではないかと推測しています。
2.5%という手数料は大きいからです。
日本ではクレジット決済のほうがまだ市場が大きいようですが、クレジット決済の手数料は3.25%かそれ以上というのが多いです。ホテル旅館業界など、クレジット決済が標準になっているような業界に対してはクレジット決済の手数料が2.5%になっているという例もあるようです。
このような状況から判断すると、Pay払いで2%台の手数料というのは「安くない、高い」と思われてしまい、加盟店からはクレジット決済のほうが安心でよいという判断になってしまうかもしれません。ここまでQR決済を推進してきたソフトバンクとしては、QR決済離れをおこしたくないはずです。
店舗側に心理的な抵抗感があるのは2%台という手数料でしょうから、2%を下回るというインパクトを狙ってくるのではないかいうことです。
ビジネスモデルとして収益が見込める手数料は1%以上
経営的な視点では、昨年のPayPayの事業は約800億円の赤字です。これまで利用者増加をするための対策をバンバンやってきたので赤字なのですが、いつまでも赤字を垂れ流すわけにはいきません。また、これからも流通量の増加とともにシステム投資や関連サービスの拡充に投資が必要でしょう。おそらく年間で1000億円以上の投資になるのではないかと思います。
すでにPayPayでは年間3兆円を超える流通量があるようです。
仮に1.0%の手数料にできたとしたら、年間流通額3兆円なら300億円の手数料収入になります。しかしこれではまだまだ赤字です。
もし、年間流通量が10兆円くらいにまで成長し、手数料が1.0%だとしたら、手数料収入が1000億円見込めます。このシミュレーションだとおそらくまだ赤字でしょう。手数料が1.5%なら1500億円の手数料収入なので収支とんとんか、若干の黒字が見込めるのではないかと思われます。
PayPayの手数料は1.5%になる?
というようなことから推測すると、PayPayの10月からの手数料は1.5%と予想しました。
おそらくLINEPayも同じ手数料になるでしょう。
ひょっとしてソフトバンクのことなので、あと1年間は1.0%で、その後1.5%みたいな変化球を打ち出してくるかもしれません。
あたっているのか外れているのかは、もうすぐわかります。おそらく7月ころに手数料がいくらになるかの正式な発表があるでしょう。
この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
民民での直接契約を中心としていますが、商工三団体などの支援機関が主催するセミナー講師を年間数十回担当したり、支援機関の専門家派遣や中小企業基盤整備機構の経営窓口相談に対応したりもしています。
保有資格:中小企業診断士、情報処理技術者など
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