OKRは「Objectives and Key Results」の頭文字をとっています。「OKR」とは、企業やチーム個人の目標管理手法としてシリコンバレーを中心に広まった方法論です。「OKR」とは、目標と達成度を測る指標を組織の目標(ミッションやパーパス)に関連付けて、組織と個人が向かうべき方向を明確にする目標管理手法です。特徴的なのは「個人としては達成が難しいくらいの大きな目標や夢を語ること」が重要だということです。またOKR達成の報酬は、賃金とは直結させないほうがうまくいくというのもおもしろいです。
OKR(Objectives and Key Results)
OKRは夢のある大きな目標を語ることが重要
OKRを運用するさいの最も大きな注意点は「夢のある大きな目標」を掲げることです。まずは企業がミッション・ビジョンまたはパーパスなどで目標を明言していることが前提になります。そのうえで、個人がその企業の目標と関連付いているような大きな目標を設定します。この個人目標は達成できなくてもOK、というくらいの大きな方向感を出すことが大事です。
OKRは「O」と「KR」にわけて設定します。
Objectives(目標): これは、達成すべき大きな目標やビジョンを示します。この目標は、インスピレーションを与え、モチベーションを高めるものであるべきです。
Key Results(主要な結果): これは、その目標をどのように達成するかを具体的に示す指標です。数値やパーセンテージなど、具体的で測定可能なものであるべきです。
OKRの特徴
OKRの特徴は以下のとおりです。
透明性: OKRは公開され、全員が他の人々の目標や進捗状況を確認できるようにすることで、組織全体のアラインメント(俯瞰して見える化すること)を強化します。つまり他の社員からも別の社員が設定したOKRを自由に見ることができるようにすることです。このような透明性の確保はとても大事です。
短期的なサイクル: 通常、OKRは四半期ごとに設定・評価されます。これにより、迅速にフィードバックを受け取り、方向性を修正することができます。評価する場は個人面談(1on1)で、面談時間は30分以内と短めにしたほうがよいと言われています。
挑戦的な目標: OKRは、100%達成するのが難しいような挑戦的な目標を設定することを奨励します。これにより、チームや個人は自分たちの限界を押し広げることができます。また、達成できなくてもそのことを批判するような空気感がでてはいけません。失敗を許容する社風を醸成しておくことが前提です。
(心理的安全性を確保しておくことは重要な前提条件です)
OKRは基本的な報酬と連動させないこと
OKRの達成度は、直接的な賃金やボーナスとは連動しないようにしましょう。これは、挑戦的な目標を設定することを奨励し、失敗を恐れずに新しいことに挑戦する文化を育むためです。
直接的な報酬と連動させると、挑戦的な目標を立てなくなる傾向が強くなるからです。そもそも人は、本能的にリスクを避ける傾向が強いので、直接的に報酬に関連するとなると、達成可能な低くて安全な目標設定にとどまる可能性が高くなります。
ですから、OKRとは別に報酬を決定するしくみを確立したうえで、OKRの達成はゲーム感覚のようなボーナスや非金銭的な報酬を用意したほうがいいです。
OKRのシートは簡潔なものに
OKRの記入シートには決まったフォーマットがありません。絶対に必要なのは「O」と「KR」です。
以下は、ある中小企業が実施しているOKRシートの記入サンプル例です。
*達成率が6割で文句なし、8割でみんなに自慢したい。10割で泣けるほど嬉しい。
*「O」はみんながワクワクするもの、「KR」は多くても3つにとどめてください。目標(Objective):達成したいことを具体的かつ定性的に記述する
主要な成果(Key Results):目標を達成するために必要な成果を具体的かつ定量的に記述する
期限:目標と主要な成果を達成するための期限を記述する
達成度:目標と主要な成果の達成度合いを数値化して記述する
評価:目標と主要な成果の達成度合いに対する自己評価やフィードバックを記述する
OKRを使うさいには「心理的安全性」を確保すること
OKRを心理的安全性の環境作りに活用する際の注意事項を紹介しておきます。
- 過度な評価に使わない:OKRは進行中の目標の達成度を測るものであり、パフォーマンス評価の唯一の指標として使用すべきではありません。過度に評価に結びつけると、従業員はリスクを取らず、安全な選択をするようになり、心理的安全性が低下する恐れがあります。
- 失敗を許容する文化:OKRは挑戦的な目標を設定することを推奨しています。そのため、すべての目標が常に100%達成されるわけではありません。失敗を学びの機会として捉え、それを共有する文化が必要です。
- 透明性の確保:OKRは透明性を高めるためのツールです。組織内のすべてのレベルでOKRが共有されることで、どのチームや個人がどのような目標に取り組んでいるのかを理解することができます。
- 定期的なレビュー:OKRは周期的(たとえば四半期ごと)に見直し、更新されるべきです。このレビューの過程で、チームや個人が直面している課題や障壁を共有し、サポートを求める機会を持つことが重要です。
- コミュニケーションの重視:OKRの設定やレビューの過程でのコミュニケーションは、心理的安全性を確保する上での鍵となります。従業員が自分の意見や懸念を自由に表現できる環境を作ることが大切です。
- トップダウンだけでなくボトムアップの意見も取り入れる:経営層だけでなく、フロントラインの従業員の意見や提案もOKRの設定に反映させることで、組織全体のコミットメントを高めることができます。
OKRを導入することで、組織の目標やビジョンに対するアラインメントを強化するとともに、心理的安全性の環境を築くための土壌を作ることができます。
心理的安全性については以下のページで解説しています。
上記の記事をご覧になってください。
OKRとMBOとの比較
OKR(Objectives and Key Results)とMBO(Management by Objectives、目標管理)は、ともに目標管理の手法として知られていますが、そのアプローチや特徴には顕著な違いがあります。
以下に、共通点と違いを比較し、その後に重要な違いや特徴について詳しく解説します。
OKRとMBOの共通点
- 目標設定: 両者ともに目標を設定し、それを達成するための活動を中心に組織や個人の業績を管理します。
- パフォーマンス評価: 目標の達成度に基づいて、定期的にパフォーマンスを評価します。
- 戦略的アラインメント: 組織全体の戦略やビジョンと個人やチームの目標を整合させることを重視します。
OKRとMBOの違い
- 期間: OKRは通常、短期的なサイクル(例:四半期)で設定・評価されるのに対し、MBOは年次を基本とした長期的なサイクルでの目標設定が一般的です。
- 目標の性質: OKRは挑戦的な目標を奨励し、100%の達成が難しい目標を設定することが一般的です。MBOでは、達成可能なリアルな目標が設定されることが多い。
- 透明性: OKRは組織全体での透明性を重視し、他のチームや個人の目標が公開されることが一般的です。MBOでは、目標は個人や上司との間で共有されることが多い。
- 報酬との関連: MBOは目標の達成度に応じて報酬やボーナスが決まることが一般的です。一方、OKRは報酬とは直接リンクしないことが推奨されることが多い。
OKRとMBOの重要な違いや特徴について
- 挑戦的な目標: OKRの最も顕著な特徴の一つは、挑戦的な目標を設定することを奨励する点です。これにより、組織や個人は自らの限界を押し広げ、革新的な取り組みを促進します。
- 透明性の重視: OKRでは、組織全体のアラインメントを強化するために、目標の透明性を非常に重視します。これにより、組織内のコミュニケーションや協力が促進されるとともに、全体の方向性を共有することができます。
- 報酬との切り離し: OKRでは、挑戦的な目標を設定する文化を育むため、目標の達成と報酬を直接リンクさせないことが推奨されます。これに対して、MBOでは目標の達成度が報酬や昇進の基準として使用されることが一般的です。
これらの違いから、OKRは迅速な変化や革新を求める組織や、組織全体のアラインメントを強化したい場合に適しています。
一方、MBOは安定した経営環境や従来の目標管理手法を継続して使用したい組織に適していると言えます。
この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
民民での直接契約を中心としていますが、商工三団体などの支援機関が主催するセミナー講師を年間数十回担当したり、支援機関の専門家派遣や中小企業基盤整備機構の経営窓口相談に対応したりもしています。
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