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「新聞はスマートフォンで」という時代が現実的になった、石川県の代表紙北國新聞のスマートフォン利用料は月額300円

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スマートフォンで新聞購読
パソコンよりもスマートフォンやタブレットが売れている時代になっている。宅配の新聞も購買率の減少が著しいようだ。日経新聞など全国紙でもネット対応に力を入れている中で地方の新聞社の対応が注目されている。そんな環境変化の中で石川県の代表紙である北國新聞がスマートフォンのアプリで新聞記事配信を始めた。「北國新聞スマート」というアプリで見る新聞だ。利用料は月額300円。

北國新聞がスマートフォンのアプリで新聞記事配信

「北國新聞スマート」という名称のアプリ、利用料は月額300円

「北國新聞スマート」という名称のアプリで、アンドロイドでもアップル(アイフォン、アイポッドタッチ、ipad)でも使える。アプリ自体は無料でダウンロードできるが、閲覧するときはIDとPWが必要。IDは月額300円の会員契約をする必要がある。今申し込むとテスト運用のようで、実際の課金は6月1日からと表示されていた。

▼アップル用のアプリ
https://itunes.apple.com/fr/app/bei-guo-xin-wensumato/id621262572

▼アンドロイド用のアプリ
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.hokkoku.smart

なお、アプリを検索するとき「北国新聞」だとヒットしない。理由は「北國新聞」の「國」の漢字が「国」ではないからだ。これはかなり盲点で、「北国」で検索してもヒットしなくて利用開始できないユーザーもかなり多いのではないだろうか。地元民であればなんとかクリアして、探しだしてほしいものだ。

地方紙が全国紙に差別化するには

さて、スマートフォンなどを利用したネット配信の新聞記事を読むなら「地方紙より全国紙のほうがいい」と思っている読者は多いはずだ。政治や経済、スポーツなど、主要な記事は全国紙のほうが情報収集が有利だし、情報発信が早いからである。しかも内容が濃く質の高い記事も全国紙のほうが期待できる。地方在住の利用者にとって、ネット配信の新聞記事を読むなら全国紙を見るという選択は妥当である。

では、地方紙にとって、全国紙に対抗できる強みはないかというとそうでもない。

葬祭会場の地図がグーグルマップで表示される実は「おくやみ情報」が載っているのが地方紙の強みである。地域にもっとも密着した情報提供サービスが「おくやみ情報」である。
今回の北國新聞スマートでも、おくやみ情報は充実している。おくやみの人名や喪主などがきちんと紹介されており、なにより便利なのは葬祭会場の地図がグーグルマップで表示されることである。出先でも人名や会場の場所が地図で確認できるというのは外出が多いビジネスマンにメリットが大きい。この機能だけで十分利用価値があると感じるユーザーも多いだろう。

地方紙がネット配信するサービスを始める理由

地方紙にとって、新聞記事をネットに提供することを選択したのは、戦略的には大きな意思決定だ。

プラス面はなんといっても、収益増加が見込めることである。とくに新たなユーザー層の獲得には期待が大きいだろう。
平成生まれの社会人が増えているが、平成世代の若者はあまり新聞を読まない。親元を離れ一人暮らしを始めても地元の新聞を購読する率はかなり低い。その点、購読料の安い地元新聞のスマートフォン配信ならば、購読する見込みが高い。将来の顧客を育成する意味でもスマフォでのサービスを開始する意義は大いにある。
また、中高年層にとっても、パソコンやスマフォの利用率が上がっており、スマフォでも新聞を読みたいというニーズは底堅い。自宅に新聞を購読済みでも追加購読が見込める商品になる。
さらに、地元出身者が県外に移転している場合、おおいに購読する動機になる。月額300円くらいなら自分の出身地の新聞をスマフォ購読しようかというビジネスマンもそれなりにいるだろう。

宅配の新聞紙はますます減少するだろう

マイナス面は紙媒体の新聞をやめてスマホ購読に切り替わってしまうことである。宅配する新聞の発行部数の減少傾向は止まらないだろうが、スマフォでの新聞記事配信はその流れをますます加速させることになるかもしれない。
新聞の宅配部数が減れば、既存のビジネスモデルが崩れていく。新聞発行の部数が減れば、折込チラシの枚数も減る。
新聞発行の部数が減れば、新聞の広告価値も減少する。段あたり単価の下落も避けられないだろう。
折込チラシや広告は地方の新聞社の大きな収益源である。この収益源が枯渇していくことは、ビジネスモデルが成り立たなくなるという根本的な大きな問題に直面しているということである。

地方のおくやみ情報をネットで出す意味

地方紙にとって、おくやみ情報をネットに提供したことはパンドラの箱を開けたことと同じかもしれない。

「おくやみ情報」は大きな情報コンテンツである。「おくやみ情報」があるからスマフォでの購読を自主的に決めたという読者も多いはずだ。遠田もその一人である。

読者が宅配の新聞を取り続けているのは「おくやみ情報」を取得しておきたいからという理由。これはかなりあるだろう。すでに、全国ニュースだけなら地方紙を見なくても他のニュース配信などで十分に情報を取得できるようになっている。あえて新聞を取り続けるのは「おくやみ情報」がないと困るからだ。
だから、地方の新聞社は「おくやみ情報」を紙媒体の新聞だけに囲い込んでおきたいはずである。読者が宅配の新聞を購読するモチベーションになるからである。
しかし、そうも言っていられないほど環境変化が進んでしまった。これが現状なのだろう。

地方のおくやみ情報だけをネット配信するサービスがでればどうなる?

地方紙にとって、おくやみ情報をネットに提供することを選択したのは、本当にセンセーショナルな出来事だと思う。

しかし、まだまだ環境変化は続いていく。そもそも「おくやみ情報」が地元紙の購読動機ならば、シンプルに「おくやみ情報」だけをスマフォやパソコンなどで読めるようネット配信するサービスがあればいい。
今は、まだそのような本格的な「おくやみ情報配信サービス」は見当たらない。いずれそのようなサービス業者が現れるだろう。意外にも国内ではなく、国外のインターネットサービス業者がそのような情報提供サービスをスタートするかもしれない。
今後の環境変化には目が離せないが、慣れ親しんだ地元紙には愛着がある。どんなカタチであれ、残っていくサービス提供をし続けてほしいものだ。