流通BMSとは、メーカー、卸、小売店の製販配間で交わされるEDI(電子データ交換)の国内標準仕様のこと(Distribution Business Message Standards )。経済産業省がリーダーシップをとり、財団法人流通システム開発センターの流通BMS協議会が仕様を決めている。2007年に最初の仕様「基本形Ver.1.0」が発表され、2009年に「基本形Ver.1.3」となり、より一層の統合が進んだ。
流通BMSはXMLベースのマークアップ言語となっているのが大きな特徴である。XMLということはインターネット接続のWEB-EDIを強く意識している。電話回線ではなくインターネットを使ったEDIの標準仕様ということである。
今でも流通業はJCA手順がEDIの主流である。そもそもJCA手順とは日本チェーンストア協会が1980年に制定しており、金融業や製造業とは違う形式で標準化されている。電話回線での通信が基本の時代だったので、データ形式も基本は固定長、項目数も最低限度で自由記入項目が少ない。詳細な商品データを組み込むことは困難なので、各社は独自に顧客ごと仕入先ごとのデータベースを社内に持ち独自カスタマイズしているのが現状だろう。そのため、システムのメンテナンスやリプレースが困難である。
流通BMSの利用状況(小売)
これまでのEDIは伝統的に電話回線接続のJCA手順が多かったが、さすがに電話回線+モデムという通信インフラに未来感はない。ノートパソコンにモデムが内蔵されるのが標準的だった時代は過ぎ去っている。今やモデムを調達しようとすると一苦労する。むしろパソコンよりもタブレットのほうが業務利用でも増えている現状と今後を考えると、インターネット接続をベースとしたEDIのしくみの標準化は必須だろう。
流通BMSを導入している大手流通業が増えている。2012年にイオングループが流通BMSに切り替えたことから、認知と普及が一気に増加したようである。
▼流通BMS導入企業一覧
http://www.mj-bms.com/etc/article/70
▼流通BMS導入した製造業・卸業のグラフ(http://www.dsri.jp/ryutsu-bms/info/release20131218.pdfより)
まだまだ、流通BMSの認知度は高くないが、これからのシステムリプレースでは流通BMSをベースに検討せざるをえないのが実情だろう。
流通BMSが旧来のEDI(JCA手順)と比較したメリット
(以下はhttp://www.dsri.jp/ryutsu-bms/standard/standard01.htmlより引用)
- 標準化により、卸売側の小売個別対応の負荷が軽減しているほか、計上日や相殺内容の認識違いによる月次決済時の違算が減少しています。また、小売/卸売双方で取引先追加時のシステム仕様打合せ等の負担が軽減しています。
- EDI化により、双方で日々の売掛/買掛照合が可能になることで、月次決済時の照合作業が効率化されています。また、従来は交換できなかったデータ(返品データ等)をEDI化することにより、業務の効率化を図ることができます。
- 受領データを取引双方が税法上の証憑とすることで伝票レス取引が可能になり、その結果、伝票の発行と処理、保管に関わるコストが削減されます。伝票レスについては、関係税法(法人税、消費税等)と流通ビジネスメッセージ標準の関連について、国税当局に確認を取りながら進めており、その結果は「運用ガイドライン」に反映しています。
- 旧来のJCA手順に比べてデータの送信時間が大幅に削減されることで、卸売側の出荷業務の開始時間が早くなり、物流コストの削減や発注から納品までのリードタイム短縮が期待されています。
- 通信回線がインターネットに変わることにより、旧来の公衆回線や専用回路と比較して通信コストの低減や通信プロトコルの集約によるコスト削減が実現しています。
この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
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