SECIモデル(セキモデル)を提唱した野中郁次郎先生が1月25日に亡くなったそうです。89歳でした、残念です。御冥福を祈ります。
さて、SECIモデルは、暗黙知に着目し、特定の個人が持っているすばらしい知識を見える化したうえで、組織内の別の人の暗黙知に落とし込むことをわかりやすく解説した論理です。日本人としてこのようなすばらしい知恵を生み出し共有化してくれたことに感謝です。
SECIモデル
SECIモデルとは
SECIモデルとは、組織の中で「知識」が生まれ、広がり、進化していくプロセスを4つの段階で説明した理論です。日本の経営学者・野中郁次郎氏と竹内弘高氏が提唱し、企業のイノベーション創出に役立つフレームワークとして世界中で活用されています。
【知識の2つの形】
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暗黙知(あんもくち)
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「経験や勘で得た言葉にしにくい知識」
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例:職人の包丁さばき、先輩社員の営業のコツ
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形式知(けいしきち)
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「文章やデータで共有できる明確な知識」
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例:マニュアル、レシピ、会議の議事録
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SECIモデルは、この2つの知識が**「4つのステップで循環する」**ことで、組織全体の知恵が育つ仕組みを表しています。
この記事は2014年に書いたものですが、今でも伝わりますね。
以下、事例を使ってSECIモデルを紹介します。
絶品オムライスの作り方を伝授するというケースで説明
「新メニュー開発プロセス」で見てみましょう。今回のポイントは「開発の場をどう用意し、そこから得られた知識がどのように広がり、再び個人へ戻ってくるか」という視点です。
【ステップ1:社会化(暗黙知の共有)】
状況
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先輩Aさんは「ふわとろオムライス」の火加減のコツを持っているが、言葉にしづらい。
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「どのタイミングで卵を混ぜるか」「フライパンの温度調整」などは、経験からくる感覚が大きい。
具体行動(場づくりの例)
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Bくんと一緒に調理台に立ち、先輩Aさんが実践しているところを直接見せる。
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Aさんの手元を動画撮影し、部員全員で観察する「共有の場」を作る。
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B子さん自身が実際にフライパンを振りながら「身体で覚える」練習をする。
成果
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個人の「なんとなくの感覚」が、**共同の体験(共有の場)**を通じてチームに伝わる。
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「言葉にできないコツ」がまずは他人に「体感で」伝播する。
【ステップ2:外化(形にできる知識へ)】
状況
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B子さんはAさんの動きを真似してみるが、まだ安定して再現できない。
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「いったい何秒火にかければいいのか?」など、曖昧な部分を言語化したい段階。
具体行動
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動画を分析して「黄金率」を発見する。
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例:「弱火60秒+10回混ぜる=ふわとろの確率が高い」
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ホワイトボードにイラスト付き手順書を作成。
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調理工程を「3ステップの合言葉」に変換。
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例:「1. 優しく、2. 早く、3. 大胆に」など。
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成果
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体感ベースだったノウハウが言葉や数値・図解による “見える化” になり、誰でも再現しやすくなる。
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この段階で「外化」した知識は、組織で管理・共有しやすい形になる。
【ステップ3:結合(知識の化学反応)】
状況
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他校の料理部から「卵の種類による違い」のデータを入手。
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自校の「火加減マニュアル」と照らし合わせることで、新たなアイデアを得ようとしている。
具体行動
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自校のマニュアル(火加減や手順)+ 他校のデータ(卵の種類)を組み合わせて分析。
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「平飼い卵なら弱火70秒が最適」などの新発見に至る。
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栄養士からアドバイスを取り入れ、「健康オムライスレシピ」などへ発展。
成果
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外化された複数の知識情報が結合し、新たな価値やレシピが生まれる。
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「異なる部活動同士」「社外・他組織」「専門家」など、さまざまなソースから情報を持ち寄ることで、化学反応が起きやすくなる。
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ここで得られた成果(新レシピ)は、さらに部の共有資産として管理される「知識の集積の場」を整えると、組織全体に展開しやすくなる。
【ステップ4:内面化(体に染み込む知識)】
状況
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文化祭本番、新入部員Cさんがはじめて一人で調理。
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マニュアルを見ながら実践してみるものの、失敗も多い。
具体行動
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「外化されたレシピ」を見つつ、実際に何度も調理してみる。
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失敗から学び、3回目には「火加減の感覚が自然にわかる」状態に近づく。
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慣れてきた段階で「自分のアレンジ(チーズ追加)」など、新しいアイデアも生まれる。
成果
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最初は「外化文書(マニュアル)」に頼っていたが、やがて暗黙知として体に染み込み、自然とできるようになる。
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最終的に「新しい暗黙知」が生まれ、その人自身の創造力が高まる。
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さらにCさんが得たコツを、また**社会化(共有)**に戻すことで、知識創造が循環する。
【4つのステップ】
1. 共同化(Socialization)|「体験で共有」
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やること:暗黙知を「一緒に経験」して伝える。
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例:
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料理の達人が弟子と肩を並べて調理し、火加減を体で教える。
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サッカー部で先輩の動きを見て真似する。
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2. 表出化(Externalization)|「形に変換」
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やること:暗黙知を「言葉・図・数値」に変換。
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例:
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職人の技を動画マニュアル化し、「フライパンを10秒振る」と数値で指示。
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営業のコツを「3つの魔法の質問」というキャッチフレーズにまとめる。
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3. 連結化(Combination)|「組み合わせて進化」
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やること:形式知を組み合わせて新しい知識を作る。
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例:
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複数のレシピを分析し「糖質オフの新メニュー」を考案。
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顧客データ × SNSの声をAIで解析し、新商品コンセプトを開発。
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4. 内面化(Internalization)|「体に染み込ませる」
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やること:形式知を実践し、個人の暗黙知に昇華。
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例:
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マニュアル通りに接客練習を繰り返し、自然な笑顔を習得。
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英単語帳を何度も見て、無意識にスペルが書けるようになる。
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この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
民民での直接契約を中心としていますが、商工三団体などの支援機関が主催するセミナー講師を年間数十回担当したり、支援機関の専門家派遣や中小企業基盤整備機構の経営窓口相談に対応したりもしています。
保有資格:中小企業診断士、情報処理技術者など
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