ショップサーブを運営するEストアがキャッシュレス消費者還元事業の事業者に登録された。いよいよネットショップも消費者還元事業者の加盟店登録申請ができるようになった。しかし、ショップサーブの場合は、少し問題がある。クレジットカードの料率が有利なプランBのみが消費者還元事業の対象になるとのこと。
なんと、これまでプランAで契約していた場合は消費者還元の対象にならないということだ。中小企業のネットショップの場合はプランAで契約している例が多いため、この措置は大きな波紋を呼びそうである。
ショップサーブのキャッシュレス還元事業についての説明
https://help.shopserve.jp/support/build/cashless/
には以下のように紹介されている。
キャッシュレス・消費者還元事業とは、消費税率が10%に引き上げられる2019年10月から9か月間、中小・小規模事業者を対象に「消費喚起の後押し」や「キャッシュレス化の推進」を目的に、経済産業省が主体となって実施する補助金事業です。
Eストアーは、B型決済事業者に登録され、ショップサーブの店舗さんは、本事業の加盟店登録のお申し込みができるようになりました。これにより、クレジットカード決済の受注において、消費者へ5%ポイント等が還元され、また、店舗さんには3分の1の決済手数料の補助があります。本事業は国の審査があるため、お早めにお申し込みを行い、増税後の集客力アップにつなげていきましょう。
クレジットカード決済 プランBの利用
ショップサーブのクレジットカード決済のプランBは、本事業の補助金対象サービス(B型決済事業者)に本登録されました。 そのため、国から補助を受けるには、プランBを利用している必要があり、「プランA」を利用している店舗さんは、加盟店として登録されると「プランB」に自動的に変更されます。
これまでショップサーブには、クレジット決済の料率が普通のプランAと、料率が有利なプランBがあった。プランBのほうが若干クレジット決済手数料が安いものの、その差が小さい。月商100万円未満の中小企業のネットショップはほとんどがプランAで契約していると推測できる。
しかし、今回消費者還元事業の恩恵を受けようとすると、プランAからプランBに移行しなければならない。
このタイミングでプランBにするとお得になるキャンペーンを実施するということである。
ショップサーブはキャンペーンを実施しているものの、月額9800円を追加で支払わなければ消費者還元事業の中小企業者として対象にならないということである。
さぁ困った。
10月1日までに対象事業者になるには審査に申し込んでから2ヶ月かかると言われており、すでに2ヶ月を切っている現状からは待ったなしの判断が迫られる。
プランAからプランBに移行した場合の費用と収益シミュレーション
仮にユーザーがクレジットカード(VISA)で決済するとして、いくら以上の売上があればいいのか。損益分岐点を調べるためのシミュレーションを行ってみた。
今回のショップサーブの料金形態
項目 | プランA | プランB |
還元事業 | × | 対象 |
月額プラス料金(円) | 0 | 9,800 |
VISAクレジット料率 | 3.675% | 3.250% |
店舗への還元 | 0.000% | 1.080% |
実質の料率 | 3.675% | 2.170% |
消費者還元事業の対象になると、クレジット手数料のうち約1%が事業者に還元されるので、その分も考慮に入れてシミュレーションをする。プランAとプランBの差額が、月額費用である9800円を超えるならば、プランBにするメリットがでてくる。
売上月額(円) | プランA手数料 | プランB手数料 | 差額 |
100,000 | 3,675 | 2,170 | 1,505 |
200,000 | 7,350 | 4,340 | 3,010 |
300,000 | 11,025 | 6,510 | 4,515 |
400,000 | 14,700 | 8,680 | 6,020 |
500,000 | 18,375 | 10,850 | 7,525 |
600,000 | 22,050 | 13,020 | 9,030 |
700,000 | 25,725 | 15,190 | 10,535 |
800,000 | 29,400 | 17,360 | 12,040 |
900,000 | 33,075 | 19,530 | 13,545 |
1,000,000 | 36,750 | 21,700 | 15,050 |
この表によると、クレジットでの売上が70万円を超えるようなら、プランBにしても差額が月額9800円を上回るので、収益的にプラスになることがわかった。
ということで、クレジットで月額70万円程度を売上できそうなら、プランBに切り替えて、消費者還元事業の申請をすべきだろう。
月商が10万円~50万円クラスのネットショップは、直接的なメリットが少ないので対応に苦慮するところだろう。
しかし、これだけで判断できるほど単純な問題ではない。
消費者還元5%の有無で、ユーザーは購入先を選択する可能性が高いからだ。
消費者還元対象になれないショップは売上が激減する恐れあり
楽天、ヤフーショッピング、Amazonも消費者還元の対応を明言している。出店している店舗が中小企業であれば消費者還元の対象となるようである。
▼楽天で予定されている表示方法
上記の画像はhttps://webtan.impress.co.jp/e/2019/08/06/33422から引用
楽天の「キャッシュレス5%還元対象」という表示は、実質5%値引きと同じくらいのインパクトがある。となると、還元も値引きもなにもしないネットショップは売上激減のピンチである。
そうなると、対抗手段として、5%値引きくらいのキャンペーンをするくらいの対策が必須級ではないだろうか。
仮に、全商品5%引きのキャンペーンを実施したとすると、以下のような利益減少になる。
売上月額(円) | 5%値引き |
100,000 | 5,000 |
200,000 | 10,000 |
300,000 | 15,000 |
400,000 | 20,000 |
500,000 | 25,000 |
600,000 | 30,000 |
700,000 | 35,000 |
800,000 | 40,000 |
900,000 | 45,000 |
1,000,000 | 50,000 |
上記の表では、月額売上20万円以上だと値引きによる利益減少額が1万円以上になる。そもそも、5%値引きではインパクトが弱いので、値引きセールなら10%以上くらいの表示がほしいところだろう。だとすると、月額売上10万円で値引き額が1万円ということになる。
これらのことをあわせて対策を検討するとどうなるか?
月額10万円以上のネットショップはプランBを検討しよう
消費者還元の対象になれず、無策で運営すると、ネットショップの売上は減少する可能性が高い。
では、値引きキャンペーンはどうだろう。値引き販売はネットショップの収益性を大きく低下させるので、できるだけ避けたほうがいい。
値引きキャンペーンをするよりは、消費者還元5%に乗っかったほうがいいのではないか。
だとすれば、月額10万円以上あるようなネットショップは、プランBにして消費者還元事業の申請をしたほうがよいと考える。
今回のショップサーブの措置には納得がいかない点も多いが、9月末までにネットショップとして準備できることをきちんとするためにはやむを得ない対策である。
プランBにしたうえで、売上増加対策を練るのがもっとも健全な方法ではないだろうか。
この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
民民での直接契約を中心としていますが、商工三団体などの支援機関が主催するセミナー講師を年間数十回担当したり、支援機関の専門家派遣や中小企業基盤整備機構の経営窓口相談に対応したりもしています。
保有資格:中小企業診断士、情報処理技術者など
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