関税問題は単純でない。大国は小国と結論が違う場合がある。つまり、関税をかけた保護貿易を選択したほうが、国益になる場合があるからだ。
自給自足時の国内価格は、自由貿易を選択すると「国内価格2」に低下する。(小国の場合と違い輸入価格までは低下しない)ここで関税をかけると国内価格は上昇し「国内価格1」になる。このとき、輸入価格+関税=国内価格1となる。大国の関税による社会的厚生の変化は、小国のときと違う。「税収2」が存在するからだ。マイナスとなる「死重損」とプラスとなる「税収2」のどちらの面積が大きいかにより、社会的厚生は正負どちらかわからないということになる。
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小国では自由貿易を選択したほうがよいが、大国の場合はわからない。この点が非常に注目すべき点だ。この不確実性により、大国の意思決定を複雑なものにしているといえる。国としては政治的なかけひきや思惑が働きやすい。
日本では、農産物の場合などの場合にこのモデルがあてはまりそうだ。
たとえば、米。
日本の米の消費量は世界規模でも多い。グローバルな視点でビッグマーケットだろう。だから国際貿易論では、日本の米市場は大国の市場にあたる。
もし、日本が、米を自由貿易で輸入すれば日本の米の国内価格はどうなるか?
紹介してきた経済モデルを使うと、国際価格までは下がらないと推測できる。しかし、米の国際価格はべらぼうに安い。タイなどの米の価格は日本の約1/6程度といわれている。さらにフィリピンなどの米の価格はタイの約1/6程度といわれている。
仮に、米の国際価格を日本の平均価格の1/6だとしよう。日本が自由貿易を選択すると米の国内価格は大きく値下がりする。1/6にまでは落ちないが、1/5か1/4になってもおかしくない。
ここで関税をかける。関税率はいくらが適当だろうか?
たしか、GATTウルグアイラウンドのWTOは、日本の米の輸入関税率を600%にしてはどうかと提案してきたいきさつがあった。
さて、2006年7月のドーハラウンドは農業問題でおりあいがつかず決裂した。今後、国際貿易はどうなっていくのだろうか。
この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
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