日本ではスマホの約半数がiPhoneです。そのiPhoneを提供しているApple社が追跡型広告をブロックするような仕様のOSにアップデートしました。
iOS14.5で実装されたのはATT(AppTrackingTransparency)と呼ばれているアプリのトラッキングに透明性をもたせる機能です。ATTはプライバシーに関する新たなフレームワークで、ユーザーの許可なしに、アプリやウェブサイトを横断したユーザー行動をトラッキングすることが不可能になりました。
ということは、追跡型の広告がうまく表示できなくなるということです。
ATT(AppTrackingTransparency)はFacebookを直撃
ATTの採用により一番影響を受けるのはFacebookでしょうね。昨年、Apple社がアプリのセキュリティ問題としてこのことに触れた発表をしたさいにもっとも反発したのがFacebookでした。
【10年史】アップルvs.フェイスブック「全面戦争」への道
https://newspicks.com/news/5814467/body
上記の記事を読むと、AppleとFacebookの対立が意外に根深いことがわかります。そして今回のATT採用のiOS14.5の採用で、その対立は決定的になったようです。
直近の業績発表ではFacebook社の四半期利益は倍増だということでコロナ禍で絶好調です。
なぜ、そこまでFacebookがATTに反発するかというと、自社のビジネスモデルの根幹を揺るがす大問題だからです。
GAFAMの収益構造とビジネスモデル
https://gaishishukatsu.com/archives/138041
より引用しました
上記の収益構造グラフをみると、GAFAMの5社のうちFacebook以外は複数のビジネスの柱があることがわかります。複数のビジネスの柱があるということは環境変化のリスクに対して強いということです。
一方、Facebookのビジネスモデルは広告が98%と、ほぼネット広告のビジネスモデルで成り立っていることがわかります。とくに、追随型広告を使った効率良い広告展開でスポンサーを幅広く集めていることが強みです。
しかし、ATTが導入されれば、この強みがなくなってしまうかもしれません。
iPhoneでのポップアップはどうなるでしょうか
アメリカでiOS14.5にアップデートしたiPhoneでは、以下のような表示がされるようです。
「Facebookはあなたの行動を追跡しようとしています。許可しますか?しませんか?」というような意味でしょうね。
この画像は
https://newspicks.com/news/5778595/body/
より引用しました。
このような表示では、ほとんどのユーザーが「許可しない」を選択するでしょう。
しかし、すでにFacebookは対抗措置を出してきています。
こんなツイートがありました。
And it begins. @Facebook / @Instagram explore additional scare tactics to combat @Apple iOS14 #ATT privacy changes.
“Help keep Facebook free of charge” pic.twitter.com/mOB9WJpz9A
— ashkan soltani (@ashk4n) April 30, 2021
アメリカではiPhoneで、FacebookやInstagramを開くと「Facebookを無料で続けることを手伝ってください」というポップアップ表示がされているように変わったようです。
有料化を匂わすような意味にもとれますが、ユーザーの怒りの矛先をAppleに向けようというように意図して、ATTの制限をゆるめさせようとしているのかもしれません。
しかし、この違和感は強烈ですね。
PCのブラウザもクッキーが使えなくなるため追跡型広告が難しくなります
【超解説】広告を揺るがす「サードパーティCookie」を知る
https://newspicks.com/news/5812927/body/
の記事がわかりやすいです。
パブリッシャー(媒体)が消費者(あなた)にコンテンツを提供し、広告主(ブランド)はそのコンテンツづくりの費用をパブリッシャーに提供する。そして消費者は、大量の個人情報を無数の企業に提供する。このビジネスモデルができたのは、1990年代半ばのこと。その中核をなすのが、サードパーティCookie(クッキー)と呼ばれる技術だ。Cookieは小さなテキスト片だけれど、ユーザーのネット上での行動履歴を追跡(トラッキング)する上で極めて重要な情報だ。Cookieのおかげで、広告主はターゲットを定めたり、マーケティングの効果を測ることができる。Cookieはウェブ広告、さらにはウェブパブリッシングの世界になくてはならない技術だった。それが終わりを迎えようとしている。
すでにサファリやBRAVEなどというブラウザは、クッキー情報を制限するのが標準になっています。世界中でもっとも使われているブラウザはChromeですが、遅くとも2022年にはクッキー情報を広告に使われないような制限をかける方向で開発を進めているようです。
ChromeはGoogleが開発しているブラウザです。Googleも広告収入がビジネスモデルの柱です。しかし、上記の収益構造グラフをみるとネット広告以外のビジネスも相当増やしています。それに、Googleにログインしている状態から個人を特定し統計的に情報処理するというAIによる最適な広告を出すという試みも始めています。ここはGoogleの強みですね。Facebookよりは遥かにATTの影響は少ないでしょう。
やはりFacebookが一番大きな影響を受けそうです。
ひょっとすると、これからFacebook帝国は弱体化していくのかも…
GAFAといえどもビジネスモデルは安泰というわけではなさそうです。
この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
民民での直接契約を中心としていますが、商工三団体などの支援機関が主催するセミナー講師を年間数十回担当したり、支援機関の専門家派遣や中小企業基盤整備機構の経営窓口相談に対応したりもしています。
保有資格:中小企業診断士、情報処理技術者など
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