越前蕎麦の本場である福井県には蕎麦専門の製粉会社が複数あります。普通は製粉というと小麦粉のイメージですが、福井県の製粉会社は蕎麦のみというところが多いのが特徴的です。そんな福井県の蕎麦専門製粉会社の中でもカガセイフンさんはネットでの露出が多く、通販でそば粉や生麺を購入することができるのがありがたいです。
そのカガセイフンさんは先月新工場が落成し、石臼専門の高グレード蕎麦専門の製粉会社になりました。新しい工場の2階には、そば打ち教室や蕎麦の試食体験ができる多用途スペースがあります。
今回は特別に蕎麦の試食に参加させていただきました。試食させてもらったのは、福井県産二八蕎麦ですが切り方が2種類ありました。細めの切り方と、太めの切り方で、蕎麦の食感がぜんぜん違うことにびっくりしました。そのレポートをさせていただきます。
カガセイフンさんの新工場は2022年3月落成
加賀さんとは、以前よりFISCの研修会ブログ道場やネット対決北陸三国志などの勉強会での交流がありました。勉強会仲間でのカガセイフン見学会は2012年なのでちょうど10年前でした。
それ以外でも、蕎麦鑑定士という資格認定でも同期で1級という関係もあります。蕎麦鑑定士は4年かけないと1級になれないので有資格者も少ないです。遠田が合格した当時の1級はまだ73人しかいなかったのでかなりの希少価値かなと思います。
新工場完成のはがきをいただいており、いつか新工場を見学に行きたいと思っていました。
先日、蕎麦鑑定士1級同期のゆさそばさんがカガセイフンさんの工場見学に行っていたことをSNSで見ていたので気になっていました。
そして本日、私も新工場を見学させていただきました。
工場の外観は以前の事務所部分の建物があります。なので意外に新工場はなにがどう変わったのか、前から見ただけではわかりにくいかもしれません。
建物の裏側からみると、どーんと大きな建物が見えます。この部分の中身が新工場なんです。外観はほとんど変わっていないのですが、中身はかなり大きなスペースが大幅に改造されてまったく別物というくらいに変わっていました。
新工場の中は多数の石臼が配置されていたり、低温倉庫が温度帯を変えた二種類あったりと、ちょっとこれまでとは違います。新しい設備を導入した工場は青空に映えて美しいです。
2階に蕎麦打ちや試食ができる多目的スペースがあります
2階にある多目的スペースは蕎麦打ちができる設備が整っています。
蕎麦打ち教室もできるし試食会もできますね。蕎麦打ち道場なんかをやったら人気になるかもしれません。そば粉を使った料理教室もできますね。
コワーキングスペースというよりコナワーキングスペースかも、粉を使うだけに(笑)
カガセイフンと書かれた木枡がかっこいいですね。たぶん一升枡でしょう。
蕎麦を茹でるのはIHです。ガスは使わずオール電化になっています。電気でも火力が強くて、大きなお鍋のお湯がぐらぐらと煮えているのがわかります。
蕎麦打ちするための秘密兵器がありました
新しい秘密兵器がありました。その名も坂東太郎。いい名前ですね(笑)
これらは、蕎麦打ちするための設備です。水回し、菊ごね、麺打ち、麺切り、などの作業ごとにわけて自動化するための装置ですが、完全自動ではありません。やはり人の手をかけないといけないのですが、そこはうどんと違ってデリケートな蕎麦ならではのような気がします。
この秘密兵器が新工場の特徴のひとつですね。
蕎麦の切り方が細めと太めでどう違うのか
今回は同じように「延(の)した」麺体でも切り方を「細め」と「太め」に変えた2種類の蕎麦が用意されていました。蕎麦は上記の「坂東太郎」という機械で切り分けたとのことです。
ケースには上に「細めの切り方の蕎麦」、下に「太めの切り方の蕎麦」が入っていました。
細めの切り方の蕎麦は、切り幅が1.3ミリくらいでしょうか。おそらく麺体の厚みが1.3ミリくらいなので、切り口はほぼ正方形のようになります。
太めに切った蕎麦は切り幅が1.7ミリくらいかと思われます。厚みが1.3ミリで切り幅が1.7ミリなので、断面は長方形になります。
今回は、麺の太さを切り方を変えることで、どういうふうに味わいが変わるかという実験的な取り組みもあるんでしょうね。
蕎麦の太さの分類には諸説ありますが、手打ち蕎麦の伝統的な分類では「細打ち」「中打ち」「太打ち」とされていて、その言い方が一般的なような気がします。
以下
https://www.eonet.ne.jp/~sobakiri/kirihaba/kirihaba.html
より引用
「中打ち」は「切りべら23本」といって、畳んだそば生地一寸(3.03cm) を23本に切る。従って一本の切り巾は約1.3mmとなる。(このそばの断面を考えると、 生地の厚みを約1.5mmに延ばしたとすると多少縦長ぎみの長方形になっている。)
これに対して、「太打ち」は「切りべら15~10本」で切り巾は2mmとか 3mmの太さになり、地方で出会う太い田舎そばなどに相当する。
「細打ち」は変わり蕎麦などに多く、「切りべら40本ほど」だから切り巾が 0.8mmくらいの細いそばで、さらに細いのは「極細打ち」になる。
蕎麦の切り方で味まで変わる!そばの切り方いろいろ
https://allabout.co.jp/gm/gc/219792/
にて
「切りべら」と「延しべら」の違いについて解説があります。
また、製麺機で切るときの切り幅は18番から24番までの偶数番号の4段階で決められています。JIS規格では切刃番手(きりはばんて)といいます。ラーメンなどでよく使われている切刃番手は24番の切り幅が約1.3ミリのものが多いそうです。
計算方法は、30ミリの幅をいくつで切り分けるか、ということで計算してみると以下のとおりになります。
18番(約1.7mm)計算は30mm÷18=1.6666…
20番(約1.5mm)計算は30mm÷20=1.5000
22番(約1.4mm)計算は30mm÷22=1.3636…
24番(約1.3mm)計算は30mm÷24=1.2500
なので、もしも今回の切り幅が切刃番手で設定されたとしたら、細い幅のものが24番、太い幅のものが18番だったのかもしれません。確認していないのでわかりません(あくまで推測です)
ちなみに、日本の硬貨(1円玉、5円玉、10円玉)の厚みは1.5ミリです。使うとすり減るので1.3~1.4ミリくらいになると言われています。なので、硬貨の厚みを麺の幅と比較するとわかりやすいかもしれませんね。超えないような麺の厚みというのが標準です。
「切りべら」と「延しべら」の違いまでこだわると複雑になりますが、単純に麺の太さを切り幅で変えられるのはいいですね。同じ厚みの麺体でも切り方を変えただけで、「細めの蕎麦」と「太めの蕎麦」ができるというのは便利な機械だと思いました。坂東太郎はいい仕事をしてくれます。(笑)
蕎麦の試食をさせていただきました
さっそく試食です。うれしい(笑)
蕎麦は、3タテがおいしいと言われています。
挽きたて、
打ちたて、
茹でたて。
というのが3タテです。
これが実現できる場というのはとても少ないのでうれしいです。
目の前で茹で上がった蕎麦を冷たい水できりっと引き締めて越前焼の器に盛っていただきました。
細く切った蕎麦はコシがありシコシコしています
まずは、細く切った方の蕎麦です。蕎麦の断面を見るとほぼ正方形ですね。
細く切った方の蕎麦は、コシがあってシコシコした食感があり喉越しがよいお蕎麦になっていました。信州そばは細打ちが多いので、これでもまだ細打ちとはいえないかもしれません。上記の蕎麦の太さの分類では「中打ち」くらいに相当しそうですね。蕎麦の切り口もキリッと立っているので気持ちいい見栄えです。
そして蕎麦のよい香りが、ぷーん…としていて「え、十割蕎麦でなく二八なのにこんなに香るの?」とおどろくくらいよい香りです。ダシなしで食べ切れるくらいのうまい蕎麦になっていました。あっというまに一枚目を完食しました。
太めに切った蕎麦はもちもちっとした食感がうれしい
二枚目は太めに切った蕎麦です。切り口が長方形になっていますので、平麺っぽい印象もありますね。
この太めに切った蕎麦。すごいです。むちゃくちゃおいしかった。
まず、蕎麦の香りがすごい。どかーんという感じで香り爆弾ですね。細めに切った蕎麦でもすごいなと思いましたが、太めに切った蕎麦は一段と香りのパンチが強いです。いい香りです。香りだけで満足できます。
そして味わい。これにもびっくり。細めに切った蕎麦と全然違っていて、噛みごたえがあり噛むと弾力がありもちもちした食感です。噛んで味わう蕎麦になっていますね。噛むごとに蕎麦の甘みがじゅわっと口の中にあふれます。シコシコ感や喉越しはなくなりますが、蕎麦の野趣あふれる味わいを感じたいなら太めに切った蕎麦のほうが圧倒的にいいですね。
また、蕎麦の麺体に黒い星が適度に入っていて、これがまたいい感じです。
辛味大根も美味かった
ダシは使いませんでしたが、辛味大根の大根おろしをいただきました。
普通の越前蕎麦はおろしそばのダシに辛味大根を入れて、そのダシに蕎麦をつけた状態の皿で提供されるのが定番です。
遠田は、ダシを使わないので、辛味大根の大根おろしに数滴のお醤油を垂らして薬味にしていただきました。
この辛味大根がまた美味かった。名残の時期なので辛味がおだやかだったこともありますが、この辛味大根の大根おろしだけでお酒が飲みたくなるくらいおいしかった。
この辛味大根はあわら市の農家と契約して無農薬栽培したもので、カガセイフンでも販売しているんですね。
麻王伝兵衛さんの辛味大根
https://soba-sueyoshi.co.jp/item_list/karamidaikon
ちなみに、越前焼の美しい器も作家さんとコラボして販売しているそうです。
蕎麦以外のものもセットで購入できるなんて商売がうまい。にくいです、カガセイフン。(笑)
そして3枚めは、太めの麺でいただきました
調子にのって、おかわりさせていただきました。3枚めは「細い方」と「太い方」どっちがいいですか?と聞かれたので、太めの麺でリクエストしました。
太めに切った蕎麦のほうが味わいがガツンと感じられます
個人的な趣向では間違いなく「太い切り方」の蕎麦の方が好きです。なんといっても蕎麦の味が濃い。食べ飽きないくらいうまいですね。
「細い切り方」もいいのですが、信州蕎麦がだいたい細いのでそれとは違う方が楽しみが増えます。越前蕎麦らしいガツンとした味わいを感じやすい太い切り方のほうですからね。それに、黒っぽくて荒々しい田舎そば風という特徴も出しやすいので、太い切り方のほうがいいと思います。
しかし、切り幅を変えただけなのにまったく違う味わいの蕎麦に変わってしまうというのは驚きでした。こんなに別物の蕎麦のように違うなんてびっくりです。
細い麺と太い麺の味わい比較表
細い麺と太い麺の違いを感じた項目ごとに比較して表にしてみました。
項目 | 細い麺 | 太い麺 |
香り | ◯ | ◎ |
ツルツル感 | ◯ | △ |
モチモチ感 | △ | ◎ |
喉越し感 | ◯ | × |
※この表は個人的な感想です
総じていうと、太い麺のほうが特徴が強くでてくる感じで、細い麺のほうが無難にまとまる感じですね。
今回食べた蕎麦は「手打ち」ではなく、秘密兵器による機械打ちの二八そばです。名人の手打ちによる蕎麦にまさるとも劣らないくらいのクォリティを感じました。この機械打ちの蕎麦をいずれ通販してくれるようになるのを期待したいです。
結局は福井県産の蕎麦という原料のよさが蕎麦の旨さに直結していることを感じました。
ちなみに、現在カガセイフンは「手打ち」の生麺蕎麦の通販をしています。
そば粉のプロであるカガセイフンが蕎麦打ちのプロとタッグを組んで生まれた生麺
十割と二八の二種類用意されているのがいいですね。興味ある方は上記のリンク先をご覧ください。
私は上記の水仙十割手打ち生そばのほうは数回リピート購入しています。これは間違いなくうまいですよ。
今回は見学と試食をさせてくださいましてありがとうございます。
ペコリ m(__)m
これまでの生麺試食記事
なお、これまで試食してきたカガセイフンの蕎麦に関する関連記事は以下のとおりです。
▼2022年7月8日自宅で越前蕎麦
▼2022年6月10日
太さが4種類違う蕎麦を家で食レポ、カガセイフンさんの生麺の蕎麦
▼2022年6月4日
同じ麺体でも茹で時間で食感がぜんぜん違うことを体験しました、カガセイフンさんの生麺の蕎麦
▼2022年4月9日
同じ蕎麦の麺体なのに、切り幅が違うだけでぜんぜん違う食感の蕎麦になることを体験しました(カガセイフンの新工場)
そば粉のプロであるカガセイフンさん
▼カガセイフンの役員のみなさん
会社名 | 株式会社 カガセイフン |
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所在地 | 〒910-0804 福井県福井市高木中央1丁目3004番地 »MAP |
電話番号 | 0776-54-0578 |
FAX番号 | 0776-54-4268 |
メールアドレス | info@kaga-seifun.com |
URL |
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代表者 | 会長 加賀龍夫 代表取締役社長 加賀健太郎 取締役 加賀扶美代、加賀瑞絵 |
この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
民民での直接契約を中心としていますが、商工三団体などの支援機関が主催するセミナー講師を年間数十回担当したり、支援機関の専門家派遣や中小企業基盤整備機構の経営窓口相談に対応したりもしています。
保有資格:中小企業診断士、情報処理技術者など
会社概要およびプロフィールは株式会社ドモドモコーポレーションの会社案内にて紹介していますので興味ある方はご覧ください。
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